聞き覚えのある言葉、「SESエンジニアになると人生終了」とは一体何を意味するのでしょうか。このブログでは、その背後にある3つの主要な理由を詳しく解説します。
SESが人生終了・人生台無しと言われる理由

なぜSESエンジニアの職が「人生の終わり」「人生を台無しにする」と表現されるのでしょうか。
IT産業の層状のアウトソーシング体制

IT業界の多層的なアウトソーシング体制の中で、SESエンジニアは最下部に位置しています。これが、人生が終了すると言われる理由の1つです。
この多層的な体制では、仲介会社が利益を得るため、下層に位置するほど収益性が低くなります。この低収益性は、SESエンジニアの給与に直接影響を与え、それが低くなる原因となります。
さらに、SESエンジニアが体制の最下部にいるため、上位の会社からの影響を直接受けやすいです。このような立場の低さと給与の低さが、SESエンジニアの職を「人生終了」と表現する原因となっています。
給料が低く、上がりづらい

SESエンジニアとして働くと給料がなかなか上がらないという事実も、「人生終了」という表現が生まれる一因となっています。
- 市場が決める給料: SESエンジニアの給料は多くの場合、市場の相場によって決まります。
- 下請けの収益性: SES企業が下請けとなると、利益が少なくなります。この少ない利益が給料に反映され、SESエンジニアの給料が低くなる原因となります。
- 利益の還元問題: 一部のSES企業では、企業の利益が大きくても、その利益をエンジニアの給料に還元しない傾向があります。仮にプロジェクトの単価が上がったとしても、給料に反映される部分が少ない場合、エンジニアの給料はほとんど上がりません。
同じ職種でも、フリーランスや正社員と比較してSESエンジニアの収入は低い傾向にあります。フリーランスは自分で企業と直接契約を結ぶため、収入が高くなることが多いです。正社員でも、企業と直接契約を結んでいるため、収入はフリーランスほどではないものの相対的に高いです。
しかし、SESの場合、二次請けや三次請けとなることがあり、結果的に収入が低くなる可能性があります。同じ仕事をしていても、多重下請け構造の結果、給料が低くなってしまうため、SESエンジニアの職業は「避けるべき」「危険」と評されることがあります。
案件ガチャがある

SESエンジニアとして働くということは、会社が与える案件に参加することを意味します。そのため、理想のプロジェクトに参加できないことも多いです。「案件ガチャ」という言葉が示すように、具体的な仕事の内容が明らかとなるまで待たなければならないことがよくあります。
開発が好きだけれどもテスト案件に配属されたり、プログラミングスキルを活かしたいと思っていても運用保守の仕事ばかりだったり、Javaを扱いたいと思っているのにCobolの案件に配属されたりすることがあります。また、残業が多く、プロジェクトが炎上していることもあります。これらの経験はエンジニアのモチベーションを下げ、ストレスを感じさせます。
しかし、全てのSES会社がこのような状況を作り出すわけではありません。エンジニアの意見を尊重し、希望に基づいて案件を選べる企業も存在します。自分の期待と現実が合わない場合、人生をリセットする前に、転職を考えることも一つの選択肢です。
スキルアップが困難

SESによる契約では、自身のスキルアップが難しい場合があります。
SES契約では、様々な企業に出向して仕事をすることができます。これは、多岐にわたる知識やスキルを獲得できる大きなメリットとなります。
しかし、その反面、出向した先の企業で使用している知識やスキルだけを習得するため、経験が一方向に偏る可能性があります。
特に、新卒でSESに就職する場合、自分で学ぶスキルを選ぶのが難しく、スキルアップが挑戦的になります。
また、SESの性質上、取り組む案件は大規模なシステム開発が多いです。大規模なシステムでは、最新の技術よりも安定して使える既存の技術が採用されることが多いです。
そのため、新しい技術に触れたい、または挑戦的なプロジェクトで活躍したいと考えている人にとっては、SESが最適な選択とは言えないかもしれません。
やりがいを感じられない

SESの仕事を「避けるべき」「危険」と表現する一つの理由は、自己達成感や満足感を得ることが難しい点です。
SESの仕事では主にクライアント企業のシステム開発を担当しますが、このため自社への直接的な貢献は売上面に留まります。これは間接的な貢献であり、自社への具体的な貢献がないと感じると、仕事の目的や意義を見失うことがあります。
自社のサービスや業務のシステム開発に携わることの方が、自己達成感が得られると考える人もいます。自己達成感が得られない仕事を続けることは困難で、これがSESの仕事を「避けるべき」「危険」と評価する一因になります。
大きな負担とプレッシャーが伴う

SESの仕事では、高度な専門知識とリーダーシップが求められるため、その仕事には相応の責任とストレスが伴います。これが、「SESは避けた方が良い」「SESの仕事は大変だ」という意見がある一因です。
SESの契約では、エンジニアの専門スキルや技術が評価されます。その結果、重要なプロジェクトや戦略的な役割を任されることもあります。
これらの仕事は責任が大きく、その結果、仕事にストレスを感じることが多くなるでしょう。
さらに、SESのエンジニアは頻繁に顧客や担当するプロジェクトが変わるため、新しい環境に適応することが求められます。
SESのエンジニアとして働く場合、同じ場所やプロジェクトに長く留まることは少ないかもしれません。そのため、新しい人間関係を築くのが苦手な人にとっては、これが大きなストレス源となる可能性があります。
長時間労働の可能性

SES契約では、エンジニアの能力と働いた時間によって報酬が計算されます。
契約には作業時間の上限が設定されていますが、専門的なプロジェクトや課題が割り当てられた場合、長時間働くことが求められることがあります。
例えば、作業時間の管理が厳しくない場合、作業時間が不明確になり、結果として残業が増えることがあります。
また、プロジェクトが遅れている場合や、クライアントの要求を断ることができない場合など、長時間働くことを強いられる状況もあります。
これらの長時間労働はワークライフバランスを犠牲にするため、SESエンジニアの職業は「避けた方が良い」「危険」と評されることがあります。
指揮命令権の所在がわかりにくい

他の契約形態と対比して、指導や命令を出す責任者が明示されにくい状況がしばしば見られます。
SESでは、指導や命令を出す権限はクライアント側にはないと説明されます。
しかし、実際の仕事の場で、客先から作業の指示を受けるという事例も見受けられます。
さらに、指導や命令を出す権限の所在を証明する証拠を残すことが難しいため、それを問題視するのが困難です。
所属する集団への帰属意識が薄く感じられやすい

自分が所属する企業に対する帰属意識が低くなりやすいということです。
SESエンジニアとして働くと、自分の会社に戻る機会は定例のミーティングや面談の時だけとなることが多いです。
その結果、自社とのつながりが薄れ、会社の方向性と自分の個人的な目標が合わなくなることがあります。これが転職を考えるきっかけになることもあります。
配属ガチャの闇

前述したとおり、SESエンジニアとして働く場合、自分が何に携わるか、どのようなプロジェクトに参加するかは、多くの場合、自分の意志ではなく会社の決定によるものです。この不確実性が「配属ガチャ」の闇と言われ、エンジニアの人生を台無しにする一因となります。
一人での客先常駐もある

前述の通り、SESエンジニアは一人でクライアントのオフィスに常駐することがあります。
これは一見「それは普通のことでは?」と思われるかもしれませんが、実際にはこれは法律違反です。
本来、SESエンジニアの業務は、同じ会社の管理責任者からの指示に基づいて行われるべきです。
そのため、クライアントのオフィスには、管理責任者を含む最低2人の自社のスタッフが常駐するのが法的に正しいです。
しかし、現実には、この規則はあいまいに扱われていることが多く、一人でクライアントのオフィスに常駐するという状況がよく見られます。
その結果、他のSESエンジニアも一人でクライアントのオフィスに常駐することが普通だと誤解してしまいます。
さらに、一人でクライアントのオフィスに常駐することには、精神的なストレスが伴うこと、高い専門技術が求められること、問題が発生したときに相談できる人がいないことなど、様々なデメリットが存在します。
客先の配属が恣意的に決定される

基本的に、現場探しは営業担当が行います。ただし、問題となるのは、自分が望んでいない仕事に従事させられる可能性があるという点です。
IT業界未経験者の場合、希望していない仕事でも、「自身が未経験者であるから仕方がない」と感じがちです。しかし、最悪のケースでは、ITとは全く無関係な仕事を担当することもあります。
たとえ未経験者であっても、エンジニアの仕事が本来であるにもかかわらず、電話対応や書類の整理といったタスクを任されることもあります。
そのため、IT業界未経験者は、営業担当者の裁量により、自身のスキルアップに繋がらない仕事を任される可能性があるという点を認識しておくべきです
頻繁に現場が変更される

一般的に、あなたが勤務する「現場」(クライアント先)には特定の「期間」が設定されています。
そして、案件が完了すると、契約も終了します。
稀に、現場での期待に応えられなかった場合や、人間関係に問題がある場合など、契約が強制終了となることもあります。また、自身の困難を営業担当者に伝えて現場を変更するケースもあります。
また、会社の都合で急に現場が変更となることもあります。
このような状況には以下のようなデメリットがあります:
- 人間関係がリセットされ、新たに関係を築く必要があります
- 特定のスキルを習得するのが困難になる可能性があります
- 職務経歴書を更新したり、次の現場を決定するための面談に参加する時間が必要になります
辞めてよかったという声

最後に、「辞めてよかった」という声です。SESエンジニアとして働いていた人々の中には、厳しい労働環境や待遇に耐えかねて退職し、その後の人生を充実させたという声も少なくありません。
まとめ

SESエンジニアには様々な課題があります。多層的なアウトソーシング体制により、給与が低くなりやすいです。また、自己達成感を得づらく、多量の責任とプレッシャーが伴います。指導や命令を出す責任者が明示されにくいため、法律違反の可能性もあります。頻繁に作業場所が変更されることで、スキル習得が困難になることもあります。これらの課題がSESエンジニアとしての働き方を「避けるべき」「危険」と評される一因となっています。しかし、全てのSES企業がこのような状況を作り出すわけではなく、自分の期待と現実が合わない場合、転職を考えることも一つの選択肢です。


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