「SESはやめとけ」というフレーズを、SNSや就職サイトなどで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。特にIT業界を目指す新卒や若手転職者にとって、この言葉は気になる存在です。
実際、「新卒IT求人はSESばかり」「転職エージェントが紹介するのはほとんどSES」といった声も多く、ITエンジニアとしてのキャリアを考える上で避けて通れないテーマになっています。
この記事では、「なぜSESの求人が多いのか?」「本当にやめるべきなのか?」「どうすれば避けられるのか?」といった疑問に対して、事実とデータをもとに冷静に解説。さらに「努力不足でSES」という批判の背景や、「SESは評価されない」「SESにも受からない」といった意見についても、多角的に掘り下げていきます。
そもそもSESとは何か?

まずは、「SESとは何か?」を明確にしておく必要があります。
SES(システムエンジニアリングサービス)の定義
SES(System Engineering Service)とは、ITエンジニアを顧客先に常駐させて技術支援を提供するビジネスモデルのことを指します。SES企業はエンジニアを自社で雇用し、クライアント企業に「人月単価」でエンジニアを派遣します。法律的には“派遣”ではなく“準委任契約”となります。
自社開発・請負・派遣との違い
| 分類 | 働く場所 | 業務指示系統 | 雇用形態 |
|---|---|---|---|
| 自社開発 | 自社 | 自社の上司 | 正社員 |
| 請負 | クライアント | 自社 | 正社員/契約社員 |
| SES | クライアント | クライアント | 正社員 |
| 派遣 | クライアント | クライアント | 派遣社員(派遣法) |
SESは形式的には「正社員」であるものの、実態としては“派遣に近い”働き方をするケースが多くなります。
なぜ「SESはやめとけ」と言われるのか?
主な理由は以下の通りです。
- スキルが身につかない案件にアサインされるリスク
(例:テスト業務のみ、ドキュメント整理、ヘルプデスク等) - 自社ではなく、常に他社に勤務しているため、帰属意識やキャリア評価が曖昧
- クライアントに左右される環境が多く、自分でプロジェクトを選べない
- 成果ではなく「工数(時間)」で評価されるビジネスモデル
これらの要素が積み重なり、「SESはキャリアにならない」「SESはやめとけ」と言われる背景になっています。
新卒向けの求人がSESしかないのは本当なのか?

IT業界を志望する新卒の多くが、就職活動の段階でこう感じます。
「エンジニア志望で企業を探しても、SESの会社ばかり出てくる」
「転職エージェントも求人サイトも、ほとんどがSESばかり紹介してくる」
これは錯覚ではなく、ある意味で“事実”です。
新卒向けのIT求人のうち、相当数をSES企業が占めているのが実情です。
なぜ新卒向けの求人はSESばかりになるのか?

新卒でIT業界を目指す人の多くが直面するのが、「求人のほとんどがSESばかり」という現実です。
就職サイトやエージェント経由で紹介される企業の多くがSES業態であることに、疑問や不安を抱いた経験のある方も少なくないはずです。
なぜ、こうした偏りが生まれているのでしょうか?
未経験でも採用・配属しやすい
SES企業はクライアントの要望に応じてエンジニアを配置するため、未経験の新卒でもまずは「育成コストをかけて現場に出す」ことを前提としています。技術力よりもコミュニケーション力や勤怠の安定性が重視されやすく、新卒が入りやすい構造となっているのです。
人月ビジネスのため、常に人が必要
SESは「人を貸すことでお金を得る」モデルのため、事業成長には採用数=売上拡大の関係があります。そのため、毎年多くの新卒を採用し、稼働要員として現場に投入する必要があるのです。
自社開発企業の新卒枠は狭く倍率が高い
一方で、自社開発企業はそもそも新卒枠が非常に少なく、1~2名程度しか募集しないケースも少なくありません。新卒エンジニアが自社開発企業を目指そうとすると、競争倍率が極めて高くなるという現実があります。
新卒で「SESしかない」と感じたときは、次の点を整理しましょう。
- 本当に「SESしかない」のか? それとも検索の仕方が偏っているだけなのか?
- 志望動機やスキルに一貫性がなく、自社開発を狙える状態に達していないのか?
実際、「未経験でもポートフォリオが充実している」「GitHubを運用している」「インターン経験がある」など、事前準備を整えている学生は、SES以外の企業に内定を得るケースも珍しくありません。
「SESしかない」と感じたときの戦略
- 就活エージェントを使う際には「SES以外を希望」と明言する
- Wantedlyやエンジニア特化型求人サイト(例:paiza、Qiita Jobs)などを活用
- 卒業後に半年程度スキルアップに集中し、第二新卒枠を狙う
「新卒でSESにしか行けなかった」ということは、努力不足でSESを選ばされたのではなく、情報不足と準備不足が原因であることも多いのです。
転職エージェントがSESばかりの理由とは?

「転職エージェントに相談してみたら、SESの求人ばかり紹介された」
このような経験をした方は少なくありません。特にIT未経験や20代の若手であれば、SES企業の紹介比率は非常に高くなります。
一体なぜ、転職エージェントはSES企業を大量に紹介してくるのでしょうか?
その背景には、エージェント側のビジネスモデルと、SES業界の構造が深く関係しています。転職エージェントがSES企業を多く紹介する理由を見てみましょう。
SES企業は採用枠が多く、内定率が高いから
SES企業は常に「人」を求めています。なぜなら、SESビジネスはエンジニアを増やせば増やすほど売上が上がるモデルだからです。
つまり、「人が足りていない=すぐに内定を出せる」という状況にあるため、エージェントとしても「候補者を早く決められる」メリットがあります。
成功報酬ビジネスとの相性が良い
転職エージェントは、紹介した求職者が内定・入社した際に企業から「紹介料(成功報酬)」を得ます。SES企業はこの紹介料に積極的で、支払いが早い傾向にあるため、エージェントとしても営業しやすいのです。
若手・未経験向け求人の中で、最も多く流通しているのがSES
特に20代の第二新卒・未経験の転職市場では、即戦力を求める自社開発企業よりも、SES企業の求人が圧倒的に多くなっています。
そのため、転職エージェントに「20代・未経験・IT希望」と相談すれば、SESの求人が自動的に紹介されやすくなる構造になっているのです。
転職エージェント経由でSES求人を避けるには?
SESを避けたい場合は、エージェントに対して次のように明確な希望条件を伝えることが重要です。
- 「SESではなく、自社開発を希望」とハッキリ伝える
- 「クライアント常駐NG」「チーム開発・社内勤務を希望」と具体的に表現
- 「スキルが活かせる環境」「成長できる社風」を希望することを明示
また、以下のような自社開発・SaaS系に強いエージェントを選ぶことも効果的です。
- レバテックキャリア
- Forkwell Scout
- TechClipsエージェント
- paiza転職(スキルチェック型)
エージェントの提案に流されない姿勢が大切
「この求人はあなたに向いていますよ」と提案されると、つい流されそうになりますが、エージェントもビジネスとして動いていることを忘れてはいけません。
求人内容をしっかり読み、自分のキャリア軸に合致しているかを冷静に見極めましょう。
このように、「転職エージェント SESばかり」となるのは構造上避けづらい現実ですが、知識と戦略を持つことで回避は可能です。
SESにしか行けないのは努力不足?

インターネット上ではしばしば、次のような厳しい言葉を目にします。ある種の偏見を含んでいる一方で、全てが的外れというわけでもありません。
ここでは、「努力不足でSESに行く」は事実なのか、それとも単なるレッテルなのかを整理していきましょう。
「努力不足でSES」発言が炎上した理由
SNSで「努力不足でSESになった」と投稿したエンジニアのツイートが、SES関係者の間で大きな反発を呼びました。
SESで働く多くの人々が努力を重ねている中で、「SES=能力不足の結果」と受け取られる表現は、彼らの努力を否定するものとして批判されたのです。
筆者(記事の著者)もSESの現場経験があり、「SESには優秀な人も多く、働き方の違いを努力の有無で語るのは誤りだ」と指摘。SESが悪なのではなく、表現の仕方や受け取られ方に問題があるとしています。
さらにツイート内には「条件の良い会社に転職する」との一文もあり、現職を踏み台と捉える姿勢が顔出しアカウントで公になったことで、会社や現場関係者への配慮に欠けると炎上が拡大しました。
この件が象徴するように、「SES=努力不足」という考えは一面的で危険です。業態で人を評価するのではなく、自分に合った環境でどう成長していくかを考えるべきではないでしょうか。
SESに入社する=努力不足、というのは正しいのか?
結論から言えば、一概には言えません。SESに入社する人の中には、以下のような背景を持つ人が多くいます。
- 大学・専門学校でITを学んだが、ポートフォリオや開発経験が浅い
- 新卒での就活で情報が不足しており、業界研究を深く行わなかった
- 社会人経験がなく、自己PR・志望動機の構成に苦戦していた
このような状態であっても、SES企業で内定が出やすいのは事実です。しかし、それを「努力不足」と一括りにするのは不適切です。
とはいえ「努力すれば回避できるSES」も存在する
実際に、「自社開発企業に内定をもらった」若手エンジニアの多くは、以下のような努力をしてきた人たちです。
- GitHubでポートフォリオを公開(最低1〜2本)
- チーム開発の経験を持つ(インターン、技術同人、ハッカソンなど)
- 応募企業のプロダクト分析を踏まえた志望動機を提示
- 基本情報技術者試験など、基礎的な資格取得
このように「技術+熱意+戦略」がそろえば、SES以外の道も十分開けるということです。
努力してもSESになることはある。重要なのはその後
仮に努力したうえでSES企業にしか内定がもらえなかったとしても、それは「失敗」ではありません。重要なのは、その後どのようにスキルを高めてキャリアを動かすかです。
- 希望の案件(開発寄り)に配属されるよう交渉する
- 業務外でポートフォリオを継続して制作する
- 資格を取得し、転職市場での価値を上げる
- エンジニアコミュニティでのネットワーキング
SESはキャリアの“入り口”として選ばれることも多い業態です。
どのように次のステージへ進むかが最も大切なのです。
「SESは評価されない」は本当か? その実態と課題

「SESはやめとけ」と言われる理由の一つに、「努力しても正当に評価されない」という声があります。
SESの評価制度が機能しにくい主な原因は、働く場所と評価者が分離していることにあります。
評価者(上司)が現場を見ていない
SESエンジニアはクライアント企業に常駐して業務を行いますが、自社の上司はその現場を見ていません。
そのため、日々どれだけ努力して成果を出しても、自社に正確に伝わらず、「何をしているかわからない」と評価されにくいのです。
クライアントも“外注”としてしか見ていない
SESとして現場に入った場合、クライアント側も「うちの社員ではない」「一時的な戦力」と見なすケースが多く、評価やフィードバックが極めて形式的になりがちです。
結果として、「頑張っても名前すら覚えられない」といった状況になることもあります。
3年功序列+案件単価で給与が決まる仕組み
SES企業では、「評価によって昇給」という制度が存在していたとしても、実態としては“年功序列”や“単価ベース”で給与が決まりやすい構造です。
あなたがどれだけ成果を上げても、案件の単価が低ければ給与も上がりにくいのが実情です。
「SESは評価されない」のリアルな声
実際の口コミや体験談でも、以下のような声が数多く見受けられます。
これらは、「SESでキャリアを積む」ことが難しいと言われる根拠にもなっています。
評価されやすいSES企業も存在する
とはいえ、すべてのSES企業が悪いわけではありません。以下のような「ホワイトSES企業」も存在します。
- エンジニアの現場状況を把握するために定期的な1on1や現場訪問を行っている
- 昇給やキャリアアップにスキル評価・成果評価の基準が明確
- 帰社日や社内イベントを通じて帰属意識を高めている
- 案件選択制や、スキルアップ支援制度が整備されている
こうした企業であれば、SESでも適切な評価を受けつつ、スキルとキャリアの両立が可能になります。
SESに受からないこともある?

「SESは誰でも入れる」「SESはハードルが低い」と言われがちですが、実際には「SESにすら受からない」という人が存在するのも事実です。
これは本人にとって非常につらい経験であり、自信を喪失する原因にもなります。しかし、それには明確な理由と改善策が存在します。
SESに受からない人の特徴
SES企業の多くは未経験者を積極的に採用していますが、それで最低限の「社会人としての基礎力」や「成長可能性」が求められます。以下のようなケースでは、内定を得ることが難しくなります。
コミュニケーション能力に課題がある
SESでは「常駐先での人間関係」が非常に重要なため、技術力よりも対人能力が重視されることがあります。
面接で受け答えが曖昧だったり、質問に対して的確に答えられないと、「現場でトラブルを起こすのでは」と判断されてしまうことがあります。
エンジニアになりたい理由が弱い・曖昧
「なんとなくIT業界が安定しているから」「手に職をつけたいと思ったから」など、抽象的な志望動機しか持たないと、企業側からは成長意欲が見えないと判断されます。
スキルや学習の痕跡がまったく見えない
未経験でも構いませんが、まったくITに触れたことがない・勉強していない状態では、現場に送り出せないと判断される可能性があります。
たとえば、「Progateを少し触った程度」「職業訓練校に通ったが成果物がない」といった状態では厳しいこともあります。
SESにすら受からない状況から抜け出すには?
このような状況から抜け出すためには、以下の短期改善策と中長期的な対策を組み合わせる必要があります。
- 模擬面接を受けて、話し方・表現力を磨く
- 志望動機と自己PRを論理的に組み立て直す
- 企業研究を行い、求人ごとにアピールポイントを変更する
- IT基礎知識(ネットワーク、開発工程など)を簡単に学習する
- ポートフォリオを1本作成(簡単なToDoアプリでもOK)
- paizaなどのスキルチェックで客観的なスコアを取得
- 資格取得(例:基本情報技術者、ITパスポート)
- プログラミング学習記録をSNSやブログに発信(成長の可視化)
自分を責めすぎず、戦略的に進めることが重要
「SESにも受からなかった…自分は向いていない」と感じるかもしれませんが、それは戦略が足りなかっただけの可能性があります。
やみくもに応募するのではなく、“面接に進む力”と“受かる力”を育てることが重要です。
また、時間がかかっても着実にステップアップしていくことで、SES以外の道も見えてくるはずです。
SESしかないと感じたときの対処法とキャリア戦略

これまでの章で解説してきた通り、新卒や20代の未経験者が就職・転職活動をする際、「SESしかない」「転職エージェントはSESばかり」と感じるのは珍しいことではありません。
では、そのような状況に直面したとき、どう行動すればよいのでしょうか。
ここでは「SESしかない」と感じたとき、まず確認すべきことを具体的に解説します。
本当にSES“しか”ないのかを見直す
検索している求人サイト、利用している転職エージェント、エントリー方法などによって、見えてくる企業群は大きく異なります。
たとえば「リクナビ」「マイナビ」などの大手ナビサイトではSES求人が目立ちやすい一方で、Qiita Jobsやpaiza転職など、スキルに応じたマッチング型の求人サイトを活用することで、自社開発やスタートアップなどの選択肢も見えてきます。
希望条件が曖昧すぎないか確認する
「IT企業であれば何でもいい」「まずはどこかに入りたい」といった曖昧な姿勢では、エージェント側も提案しやすいSES案件を優先してくるのは当然です。
自社開発、SaaS開発、社内SE、受託開発など、自分のやりたいこと・向いている領域を明確化することが重要です。
SESを選ぶなら「ホワイトSES」を見極める
どうしてもSES企業しか選択肢がない場合、以下のような「ホワイトSES」の条件を満たす企業を選ぶようにしましょう。
- 案件選択制度がある(希望が出せる)
- スキルアップ研修や資格取得支援制度が充実
- クライアントとの関係が安定し、長期配属の実績あり
- 評価制度が可視化されている(成果・スキル両面)
- 帰社日や1on1面談など、定期的なフォロー体制あり
- 「スキル不問・研修なし・即稼働可能」などの表現がある
- 面接で案件内容を聞いても「現場が決まってから」と曖昧な回答
- 採用担当が業務内容を把握していない
- 待機(ベンチ)のリスク説明がない or 不透明
中長期的には「ステップアップ転職」を意識する
仮にSES企業でキャリアをスタートさせたとしても、戦略的に行動すれば1〜2年で自社開発企業への転職が可能です。
そのためには、「案件で得られるスキルを意識的に伸ばす」+「副業やポートフォリオ制作で技術力を補完する」といった努力が必要です。
1年目:SESで開発案件を希望 → 小規模な改修案件などを経験
2年目:業務での成果+ポートフォリオ強化
3年目:自社開発企業や社内SEにキャリアアップ転職
その他の選択肢:起業、フリーランス、スキル留学など
どうしても自分に合う企業が見つからない場合や、他とは違う道を歩みたい人にとっては、以下のような道もあります。
- ITフリーランスとして独立(スキルと実績があれば可能)
- 海外リモート開発会社へのジョイン(英語+技術力)
- オンラインプログラミング留学(スキル+経験の獲得)
- 個人開発→起業・法人化(プロダクトベースのキャリア)
ただし、これらはリスクも伴うため、十分な準備とリサーチが必要です。
まとめ

「SESはやめとけ」という言葉には一理ありますが、SES自体が悪いわけではありません。
問題なのは、情報も目的もないまま入社し、スキルも評価も得られない状況に陥ることです。
戦略的に選び、活用すればSESはキャリアの一歩にもなり得ます。大切なのは以下の3点です:
- キャリアの方向性を明確にする
- 企業や案件を事前に調べる
- 成長に活かす意識を持つ
IT業界で後悔しない選択をするために、正しい理解と準備を今日から始めましょう。


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