出社回帰で人が辞めない会社は何をしているのか | テレワーク終了を制度設計で乗り切る

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テレワークは、もう「一時的な特例」ではなく、多くの人にとって“働き方の基準”の一部になりました。
国土交通省の調査でも、コロナ禍からの「より戻し」はありつつ、週1〜4日のテレワーク(出社と組み合わせるハイブリッド)が定着傾向だと整理されています。

一方で、出社回帰の流れも確実に進んでいます。
Job総研の調査では、2025年の出社頻度は「週5」が最多(37.6%)になりつつ、理想の出社頻度は「週3」が最多で、「週3以下」の合算は70.9%というギャップが見えます。

目次

出社回帰は「戻すかどうか」より「どう戻すか」で差がつく

出社回帰がうまくいく会社は、出社そのものを礼賛していません。逆に「テレワーク最高、出社は悪」でもありません。
両方の利点と欠点を認めたうえで、仕事の目的に合わせて“設計”しています。

ポイントは一つだけです。
出社は“手段”。手段を変えるなら、目的と運用をセットで出す。

「GAFAMも出社回帰だから」のように目的が曖昧なまま「週5出社に戻します」だけが先に出ると、社員の頭の中ではこう変換されます。

机に向かっているのを目視しないと「仕事をしている」と認識できないんだな。

遠方の人材を採用したり遠方への引っ越しを推奨しておいて、「遠くても出社強制」はおかしくない?

「帰属意識が減る」とか会社の都合だろ。

単純な制度の善悪ではなく、社員との信頼の問題です。一度崩れた信頼は、簡単には戻りません。

いま、なぜ出社回帰が起きているのか

まずは企業側の事情として、出社回帰にはこのような背景があります。

  • 新人育成・オンボーディングの難しさ
  • 合意形成や意思決定の遅さ(会議が長い、決まらない)
  • 情報共有の分断(部署間・拠点間)
  • セキュリティや顧客要件(端末持ち出し、機密管理)
  • 組織文化の希薄化(横のつながり、帰属意識)

「リモートに適したマネジメントの仕組みが整っていない」まま、テレワークだけが続いてしまったケースが少なくありませんが、本来企業側に必要だったのは「タスクの粒度と責任分界」「レビューと承認サイクル」「進捗を数値で把握する運用ルール」など、“見えなくても安心できる仕組み”です。
ここが弱いと、上司も現場も不安になり、結局「やっぱり出社のほうが安心」に傾きます。

『週5出社に戻した会社の末路』が他人事じゃない理由

現場で起きていることとしては、「週5出社に戻した」ことそのものが原因というより、週5出社に戻すときのやり方が良くなかったことから、辞める理由を会社が作ってしまっているケースが多いです。

ここからは、典型的な「末路」を3つに分解します。

週5出社に戻した会社で、最初に起きるのは「静かな人材流出」

いきなり大炎上して全員が辞めるわけではありません。多いのは、静かに退職者が増えていくことです。

  • 大きい声で不満を言う人ではなく、転職市場で評価される人から抜ける
  • 表向きの退職理由は「家庭の事情」「キャリアアップ」
  • 残る人の負荷が増え、さらに人が辞める

これが回り始めると、引き留めても止まりません。“制度が悪い”というより、納得が作れない運用が悪いからです。

離職だけじゃない

出社回帰のコストは、離職だけではありません。採用にも効きます。

米国の研究(S&P500のRTO命令を分析)では、RTO(出社義務化)後に離職率が平均14%増し、さらに求人の充足にかかる時間が約23%増、採用率が17%減と報告されています。
しかもその影響は、女性・シニア・スキルの高い層で強い傾向が示されています。

つまり、会社が欲しい「中核層」「育成できる層」「引っ張れる層」ほど抜けやすく、しかも採れにくくなる
これが、出社回帰のいちばん高い授業料です。

「出社する意味」を作れないと、戻した分だけ不満が増える

出社させたのに、やっていることが結局オンラインで完結する仕事だけというのは、社員の不満を一気に増幅させます。

  • オフィスに出社して会議室でZoomに入る
  • 資料も議事録も結局オンライン
  • その場で決まらない会議が増える

「何のための出社?」となった瞬間、出社は“手段”から“罰ゲーム”に変わります。

『テレワークの終了がつらい』と感じる社員の本音を、どう受け止めるべきか

「テレワーク終了がつらい」と言われると、“気持ちの問題”に見えるかもしれませんが、現場で多いのはもっと構造的なつらさです。

Job総研の調査でも、出社に後ろ向きな理由の最多は「通勤に時間がかかる」(74.8%)でした。
ただ、ここで重要なのは「通勤が嫌」という単純な話ではないことです。

つらさの正体は通勤より「生活の作り直し」にある

テレワークが続いた数年で、社員は生活を組み替えています。

  • 保育園の送迎や家事分担
  • 介護・通院の段取り
  • 住まいの選択(職場から離れても成立していた)
  • 勉強や副業など、キャリア形成の時間

国交省の調査でも、テレワーク継続者は「生活(家事・育児・介護等)や趣味を重視する傾向」が示されています。
つまり出社回帰は、仕事だけでなく生活設計をもう一度組み直す話になります。ここへの配慮がないと、「つらい」と感じることは自然です。

不公平感が生まれやすいポイント

出社回帰で爆発しやすいのが“不公平感”です。
能力や成果ではなく、住まいや家庭事情で負担が決まるからです。

  • 片道15分の人と、片道90分の人
  • 子どもの送迎がある人と、ない人
  • 介護・通院がある人と、ない人
  • 服装・身だしなみ・昼食など、隠れコストが増える人/増えない人

この不公平感を放置すると、制度変更は「生活の負担を特定の層に押し付けた」と受け取られます。
そうなると、残るのは不満ではなく諦めです。

説明不足のまま制度変更は“信頼”を削りやすい

制度変更に至った理由の説明が薄いと、社員は理由を“推測”します。
そしてその推測はだいたい、会社に不利な方向へ転びます

そのため、制度を変えるなら“納得の材料”を先に用意することが最重要です。

命令だと思われない伝え方

フルリモート前提で働いていた社員(あるいはそういう条件で採用した社員)に出社を求めるとき、こじれる原因は「出社が必要かどうか」より先に、合意の作り方にあります。

理由も選択肢もなく“結論だけを押し出す”やり方をすると、短期的に従ってもらえても、中長期で信頼が傷つきます
ここは、丁寧にやった会社が結局得をします。

「お願い」と「一方的な通達」の境目は、準備の量で決まる

まず、社内で揃えるべきことを揃えます。

  • 何の課題を解きたいのか(育成?意思決定?セキュリティ?)
  • 出社が必要な業務は何か(“全部”ではないはず)
  • 影響範囲はどこか(全社一律?職種別?チーム別?)
  • いつから、移行期間はどれくらいか
  • 例外や代替策は用意できるか

この整理がないまま発表すると、社員が感じるのは「雑さ」です。それは、そのまま不信につながります。

先に揃えるべき社内整理

出社回帰は、労務的にも丁寧さが必要です。
厚労省の情報(ガイドラインやモデル就業規則等)では、労働条件の変更は個別合意が原則であること、就業規則の変更で行う場合でも合理性や周知が必要であることなどが整理されています。

つまり実務としては、「命令できるか」より、「筋の良い合意の作り方になっているか」を先に見たほうが、結果的にトラブルも離職も減ります

社内アナウンスで必ず入れるべき要素

ポイントは、出社の話を「出社してください」ではなく「組織課題を改善する施策」として語ることです。

たとえば、こんな流れです。

私たちはこの1年、業務のスピードと育成の質に課題が出ていることを確認しました。
そこで、対面でのレビューや相談が効果を発揮する場面を増やすため、◯月から3か月間、出社頻度の運用を見直します。
対象は◯◯部門で、週2日のチーム出社日を設定します。それ以外の日は、これまで通り在宅勤務も可能です。
なお、育児・介護・通院・距離など個別事情がある場合は、勤務調整の申請ができます。申請方法と判断基準は◯◯にまとめ、上司の判断だけで結論が変わらない形にします。
3か月後に、KPI(育成期間/意思決定リードタイムなど)とサーベイ結果をもとに見直し、必要なら改善します。

この文章の良いところは、「結論」より先に「目的」と「救済」と「見直し」が入っていることです。
社員が知りたいのは、出社日数そのものより、自分の生活がどれだけ壊れるのか/壊れないように会社が何をするのかだからです。

テレワークさせない上司が生まれる職場には、共通の構造がある

うちの上司、テレワークさせたがらないんですよね。

これ、現場では本当によく聞きます。

しかし多くの場合、上司の性格ではなく仕組みの不足が原因です。
上司を責めても再発します。仕組みを変えると、自然に解決へ向かいます。「テレワークをさせない上司」は、見えない環境で成果を担保する型を持っていないだけのことが多いのです。

上司任せにしない

ただ、上司がテレワークさせたがらない場合「リモート前提のマネジメント体制」が不足していたのは事実ですが、エンジニア側にも「信頼を築く行動(進捗共有、反応、報連相)」が必要だったものの不足していたケースが多いです。

エンジニアがテレワークで心がけるべきこととしては以下です。これらは地味ですが効きます。

  • タスクの粒度と責任分界を、週次で言語化する(誰が何をいつまでに)
  • レビューと承認のサイクルを短くする(週次レビュー、軽い承認)
  • 進捗は“報告の上手さ”ではなく、見える仕組みに寄せる(ボード、チケット、WIP)
  • 困りごとを早く表に出せる導線を作る(1on1=評価面談ではなく障害除去)
  • 情報共有は「口頭」より「ドキュメント」を正義にする(後追いできる)

テレワークでも大丈夫だと思える仕組みがないと、上司は「見える場所に置きたい」に戻ります。

出社回帰で揉めにくくするルールの作り方

出社回帰が荒れる会社には、このような特徴があります。

  • フルリモート派 vs 週5出社派の価値観の戦い
  • 最後は権力で決まるため恨みが残る

こうならないために有効なのが、働き方を「職務×頻度×目的」で分解するやり方です。

「職務×頻度×目的」で決めると、納得が作りやすい

たとえば、こんな整理です。

  • 職務:対面が価値を持つ業務はどれか(育成、合意形成、顧客同席、設備作業)
  • 頻度:週2固定が良いのか、月1集合が良いのか、期間限定が良いのか
  • 目的:出社日に何をやるのか(“来る”ではなく“やる”)

国交省の調査でも、週1〜4日のハイブリッドが定着傾向とされています。
つまり実務的には、最初から“白黒”にしないほうがうまくいく可能性が高いです。

運用タイプの選び方

現場でよく運用されるのは、次の3タイプです。

  • 固定出社型:週2の固定日をチームで揃える(合意形成が多い組織に向く)
  • 目的出社型:レビュー、キックオフ、1on1など“イベント”で出社(自律度が高い組織に向く)
  • 期間限定型:立ち上げ3か月は出社多め→安定したら減らす(新規PJや新人育成に向く)

重要なのは、どれを選んでも「例外」と「見直し」がセットになっていることです。

出社日を“わざわざ出社する意味のある日”にする

ここは軽く見られがちですが致命傷になります
「わざわざ出社する意味」を設計しないと、社員はこう感じます。

通勤コストだけ増えた。仕事は変わらない。

思考停止で出社させている。会社は社員の時間を軽視している。

出社日には、出社しないと意味がない業務をさせる。それだけで納得してもらえるものです。

一律ルールほど離職を生む

出社回帰で最後に勝負を決めるのは、実はルール本体ではありません。例外設計です。
例外が一切なければ辞めるしかない人は一定数出ることは避けられません。逆に、例外が多すぎても運用が破綻したり、例外の基準が曖昧だと不公平感で揉めます。

最初から制度の中に“逃げ道”を作り、透明性を担保するのが揉めにくいやり方です。

透明性を担保する申請フロー

社員が一番嫌がるのは、「上司によって言うことが違う」状態です。
そのようなことが起こらないように、申請フローは次のように整えると揉めにくくなります。

  • 申請条件を文章化(例:育児・介護・通院・距離・持病等)
  • 申請の期限
  • 必要書類
  • 見直し頻度
  • 判断者を複線化(上司+人事/総務など)
  • “例外”という言葉を避け、「勤務調整」として扱う

制度の透明性があると、社員の不安が減り、「辞めるしかない」が「相談してみよう」に変わります

現実的な逃げ道を用意する

全員が同じ条件で働けない以上、逃げ道は“甘さ”ではありません。むしろ、必要な人材を残すための投資です。

  • サテライトオフィス(近場の拠点やコワーキング)
  • 時差出社(送迎との両立)
  • 短時間出社(午前だけ、午後だけ)
  • 月1集合(地方在住への配慮)

「全員一律で週5に戻す」より「必要な目的のために、必要な頻度で集まる」を設計したほうが、結果的に組織が強くなります。

伝え方で反発は減らせる

出社回帰を“実装”するコツは、社員が不安に感じる順番で情報を出すことです。

変更のときに必ず入れる5点

最低限、次の5点が入っていると荒れにくくなります。

  1. 目的(何の課題を解くのか)
  2. 対象(誰が、どこまで影響するか)
  3. 移行(いつから、猶予はあるか)
  4. 例外(調整はできるか、どう申請するか)
  5. 見直し(固定化しないのか、いつ評価するか)

社員が納得できない理由としては、「明確な説明がない」「事情が考慮されない」が代表的です。
だからこそ、説明と救済をセットで出す。これが炎上を防ぎます。

「90日トライアル」で固定化しない姿勢を見せる

出社回帰でよくある失敗は、「決めたから終わり」にすることです。実際は、決めてからが始まりです。

  • 90日運用する
  • KPIを見る(育成期間、意思決定リードタイム、離職・採用など)
  • サーベイで現場の痛みを拾う
  • 運用してみて問題があればすぐに改善する

この“回す前提”があるだけで、社員からの反発は減らせます。

よくある質問に先回りして答える

出社回帰の説明で出る質問は、だいたい決まっています。

交通費はどうなる?

出社回数で評価が有利になる?

遠距離に住んでいる人はどうなる?

育児・介護・通院のために勤務時間を調整できる?

これらの質問があってから「どうするか考えます」「まだ決めていません」と答えると、社員は「思考停止で出社することだけとりあえず決めたんだな」と感じ、不信感を持ちます
先にQ&Aとして出しておくだけで、信頼が守れます。

まとめ

  • 出社回帰は「週5に戻すか」ではなく、「目的に合わせて設計するか」で結果が変わる
  • 「テレワーク終了がつらい」の正体は出社そのものでなく、生活設計の作り直しと不公平感にある
  • 「思考停止で出社させている」と感じさせないよう、説明・例外・運用の型を先に用意する

出社頻度を増やすこと自体が悪いわけではありません。問題は「理由が伝わらない」「調整できない」「運用が回らない」ままルールだけ変えることです。
目的と救済策、そして見直し前提の運用をセットで整えるだけで、出社回帰は“人が辞める施策”ではなく“組織を強くする施策”に変わります。

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この記事を書いた人

セルワークITフリーランス編集部のアバター セルワークITフリーランス編集部 セルワークITフリーランス編集部(運営:株式会社セルバ)

セルワークITフリーランス編集部は、ITエンジニア・ITフリーランス・SES人材のキャリア支援を行う「株式会社セルバ」が運営する編集チームです。

株式会社セルバは、Webシステム開発・ポータルサイト構築を中心に20年以上の実績を持ち、IT業界・人材業界の両分野において、事業運営と現場支援の両面から関わってきました。
自社サービスとして、IT人材向けの求人・マッチング・キャリア支援に関する複数のWebサービスを運営しています。

編集部では、そうした事業運営の中で蓄積されてきたITフリーランスからの相談内容、案件参画時の実例、契約・単価・キャリアに関する課題をもとに、実務に即した情報を編集・監修しています。

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