ITエンジニアの仕事は多岐にわたりますが、その中でも「運用保守」は重要な役割を果たしています。
しかし、一部の人により「運用保守は底辺の仕事で、スキルがつかない」という声もあるのが現状です。
本記事では、エンジニアでの転職を考えている人に理解しやすいよう、保守運用が底辺と言われる理由やスキルがつかないという誤解について深掘りし、エンジニアとして成長するために必要なことについて考察していきます。
運用保守とは?

「保守運用」とは、システムがスムーズに動き続けるために行う一連の仕事のことを指します。
これには、システムの監視、問題の対応、性能の改善、セキュリティ対策などが含まれます。
これらは、組織のITシステムが常に最適な状態で動き続けるために必要不可欠です。
また「運用」と「保守」という言葉がよく一緒に使われますが、実はこれらは厳密にいうと少し違います。
「運用」は、現在のシステムが毎日問題なく動くようにする仕事です。
一方「保守」は、システムの問題を修正したり、新しいバージョンにアップデートしたりと、システムを良くするための変更を行う仕事です。
システムが問題なく動き続けるためには、これら「運用」と「保守」の両方が必要不可欠なのです。
保守運用が底辺と言われる理由

では、なぜ運用・保守の業務に対して否定的な意見が飛び交うのでしょうか?
理由として考えられるものを考察していきます。
ルーティン作業が多く、スキルが身につきにくいと思われがち

システム運用・保守の主な役割は、ITシステムの安定した運行をサポートすることです。
システムの監視業務は、日々のルーティンワークが中心で、ログの確認やバックアップの実行、システムの稼働チェックなど、マニュアルに従った確認作業を繰り返すことが多くなります。
そのため、自分で考えて判断する場面が少なく「誰でもできる仕事」、「技術が身につかない」と思われることが多くあります。 実際には、未経験者が最初に配属されることも多く、スキルアップにつながりにくいと感じる人もいるのが現状です。
目立ちにくい仕事で、成果が評価されにくい

運用保守の仕事は、システムが安定して動き続けるよう見守り、障害があっても迅速に対応することが重要な業務です。 しかしその性質上「成果が見えにくい」、「評価されにくい」と感じる人も少なくありません。
また、保守的な現場は今後、自動化やAI導入の対象になりやすく、業務の価値自体が過小評価される傾向があります。 業務の性質上、夜勤や休日対応を求められることも多く、生活の負担が大きい割に給与や程度が見合わないケースもあります。
構築や開発のように新しい技術や知識を扱う機会が少ない場合が多いため、“縁の下の力持ち”的な存在の運用保守の仕事は、市場価値としてなかなか評価が厳しいと感じる人も多くいるようです。
お客様からのフィードバックが得られにくい

運用・保守の業務では、ユーザーとの直接的な接触が少なく、ユーザーからの直接的なフィードバックを得る機会が少ないという特徴があります。
業務の多くが裏方で行われるため、利用企業やユーザーからの反応を直接受けられる経験はほとんどありません。
人によっては、このような仕事環境は仕事のやりがいを感じにくいと思う人もいるかもしれません。
これが「運用保守は避けた方が良い」という意見が生まれる一因かもしれません。
運用保守の仕事では、本当にスキルが付かないのか?

運用保守の仕事は、“縁の下の力持ち”と言えるほどに目立ちにくい且つ重要な役割を担う仕事ですが、ルーティーンワークであるが故に「スキルアップが望めない」と思われがちな仕事でもあります。
しかし、それは本当なのでしょうか?
ここでは、運用保守でどんなスキルを得られるのか、どのように活用できるのかを考察していきます。
運用保守から得られる「実は重要なスキル」

保守の仕事は「地味」、「成長しにくい」と思われがちですが、実はエンジニアとしての土台をしっかり作れる、非常に重要なスキルが身につく分野と言えます。具体的には以下の通りです。
①トラブルシューティング能力
身につくスキル
- ログの読み方
- アラート原因分析
- ネットワークやOSの基礎知識
それによって育つ力:問題の本質を捉え、段階的に原因を絞り込む力が養われる
②業務改善・自動化の視点
身につくスキル
- シェルスクリプト、Pythonなどを使った自動化
- バッチ処理や運用フローの整備
- 手作業の効率化(ExcelマクロやRPAなど)
それによって育つ力:業務全体を俯瞰して「どうすればもっと良くなるか」を考える習慣が身に付く。これにより開発チームと運用チームとの橋渡しも可能に。
③システム全体を俯瞰する力
身につくスキル
- サーバ構成とネットワークの理解
- アーキテクチャ図の読解
- 各種ミドルウェアの役割理解(Apache、Nginx、DBなど)
それによって育つ力:部分ではなく全体を見て考えられる視野の広さと、開発者やインフラエンジニアが見落としがちな「運用の現場視点」が強み。
④対応力・コミュニケーション力
身につくスキル
- 障害時の判断能力
- 関係展開の調整・報告スキル
それによって育つ力:冷静に状況を整理し、関係者と包括的に連携する力。これはチーム開発やマネジメントにも欠かせない要素。
⑤情報整理や書類作成スキル
身につくスキル
- 作業報告書や障害報告書作成
- 手順書の整備と改善
それによって育つ力:自分の知識を他人に伝える力=アウトプット力が向上。これはチーム内での知見を築くだけでなく、キャリアアップ時のポートフォリオにも役立つ。
エンジニアとして成長するのに必要なこと
このように、運用保守のスキルも、見方を変えればエンジニアとしてのスキルアップに活かせることがわかりました。
では、エンジニアとして成長していくのにはどのようなことが必要なのでしょうか?
3つの項目に分けて考察していきますね。
①自ら学び、発信する力
運用保守の現場では、ルーティンワークや手順通りの対応が多く、指示されたことを達成するだけでも仕事がうまくいってしまう場合があります。 しかし、それだけではエンジニアとしての成長は限定的です。
そのため、大切なのは「自ら学び、発信する力」です。
QiitaやZennに記事を投稿したり、Notionで自分用ナレッジをまとめたり、技術系の資格を取ったりすることで、自分のスキルを伝達していくことができます。
②改善・自動化に対する視点を持つ
運用保守の仕事には、毎日・毎週繰り返される定型作業が多くあります。
例えば、ログの取得やバックアップの実行、定期的なチェックリストの確認などは、誰がやっても同じ結果になることが求められます。
そのため、よくある作業に対してシェルスクリプトを書いて自動設定したり、作業手順書を整備・簡素化することで技術的な出力を手早く進めたりして、より業務スピードが上がり、効率化できます。
このような取り組みは、自分のスキルアップだけでなく、チーム全体の生産性向上とつながります。
そして、チームからの気づきや評価を得るきっかけにもなります。
はじめは小さな作業からでもいいので「非効率だな」と思うポイントを見つけ、調べ、試し、提案するようにしましょう。
③次のキャリアを見据えて「学び」を探す
運用保守の仕事を長く続けていると「このままでいいのか」と不安になることもあるでしょう。
しかし、自分がどの方向に成長していきたいのかを意識し、そのためのポイントを日々の業務の中で見つけていくことで、不安どころか成長スピードを上げることができるようになります。
自分の興味が湧く業務に対して常に関心を持ちながら、そこから少しずつ学びを広げていくことが、将来のキャリア選択につながります。
また、社内の異動や小さなプロジェクトへの参加、社外勉強会などをしながら、視野を広げるのも効果的です。
大切なのは、「今の業務の中に、未来へのヒントが隠れている」という視点を持つこと。
キャリアは待つものではなく、探し続けていくものなのです。
まとめ
運用・保守の仕事というのは、日々のルーティーンワークをただこなすだけになると、新たなスキルを得る機会をなかなか掴めなくなってしまう仕事でもあります。
新しい業務に挑戦したり、資格を取得しようとするなど、自分自身でスキルアップの機会を作り出すことが何よりも大切です。開発や設計の業務にも興味を持って学ぶ範囲を広げてみたり、運用保守の仕事をより深い視点で向き合うことで、エンジニアとしてのキャリアの幅はさらに広がるでしょう。
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