「SESって有給取れないんですよね?」
IT業界への転職相談を受けていると、かなり高い頻度で聞かれる質問です。特に未経験からエンジニアを目指す人ほど、「客先常駐=休めない」「SES=ブラック」というイメージを持っている傾向があります。
実際、SNSや掲示板では「有給を申請しづらかった」「案件次第では休みにくい」といった声を見ることもあります。ただ、結論から言えば、現在のSES業界は昔よりかなり有給を取りやすくなっています。もちろん、リリース前や障害対応などで調整が必要になるケースはありますが、それは受託開発や自社サービスでも同じです。
この記事では、「SESは有給禁止」と言われる理由や、現在のリアルな実態について、現場感ベースで解説していきます。
「SESは有給が取れない」と言われる理由

SESに対して「休みにくい」というイメージがついたのには、きちんと背景があります。
単なる偏見ではなく、過去のIT業界の空気や、SES特有の働き方が関係しています。
客先常駐という働き方が「休みにくそう」に見える
SES最大の特徴は、クライアント先に常駐して働くことです。
自社ではなく客先で働くため、
- 「外部の人間だから立場が弱そう」
- 「客先の顔色を見ないといけなそう」
- 「自由に有給を取りづらそう」
というイメージを持たれやすくなっています。
特にIT業界未経験の人ほど、「お客様先に行く」という構図から、“派遣に近い働き方”を想像するケースがあります。
実際、SESでは客先スケジュールに合わせる場面があります。
例えば、
- 本番リリース前
- 障害対応中
- サーバー切替日
- 月末処理
- 大型メンテナンス前
などは、

この日はできれば避けてもらえると助かります
と相談されることがあります。
これだけ見ると、



やっぱり休めないじゃん
と感じる人もいるでしょう。
ただ、重要なのはここです。
これは“有給禁止”ではありません。
あくまで「プロジェクト都合で調整が必要になるケースがある」という話です。
この違いはかなり大きいです。
例えば飲食店でも、年末年始に全員同時に休むのは難しいです。
営業職でも、大型商談前に長期休暇は取りづらくなります。
つまり、SESだけが特別なのではなく、「チームで動く仕事」には一定の調整が発生するという話でもあるのです。
「客先に気を使う空気」がストレスになることもある
SESで働く人の中には、「有給制度そのもの」より、“休みを言い出しづらい空気”にストレスを感じる人もいます。
例えば、
- 周囲が全然休まない
- 現場リーダーが古いタイプ
- 外部メンバーが少ない
- 常駐先の文化が体育会系
といった環境では、「有給を取りたい」と言い出すこと自体に心理的負担を感じるケースがあります。
これは制度というより、“現場文化”の問題です。
実際、日本企業全体に「有給を取りづらい空気」が残っている会社はまだあります。
つまり、「SESだから休みにくい」というより、“その現場が休みにくい”ケースもかなり多いのです。
逆に最近では、
- 「ちゃんと休んでください」
- 「有給は早め共有だけお願いします」
- 「旅行ですか?楽しんできてください」
くらいの温度感の現場も普通にあります。
特に若いPMやモダンな開発組織では、「誰かが休む前提」でスケジュールを組むことも増えています。
昔のIT業界は本当にかなりハードだった
過去のIT業界の働き方も強く影響しています。
特に2010年代前半くらいまでのIT業界は、今よりかなりハードでした。
当時は、
- 終電帰り
- 徹夜作業
- 土日出勤
- 長時間残業
- 納期前の泊まり込み
なども、今より普通に存在していました。
現在ならSNSで炎上するような働き方でも、当時は「IT業界だから仕方ない」で済まされていた時代があります。
SESもその影響を強く受けていました。
特に多重下請け構造の現場では、下流会社ほど立場が弱くなりやすく、
- 客先最優先
- 契約継続のために無理を飲む
- 休みより現場対応
という空気が存在していたことも事実です。
そのため、有給を申請しづらい、休みたいと言い出しにくい、現場優先で予定を後回しにする、といった状況が起こりやすかったのです。
そして、その時代の口コミや体験談が、現在でもネット上に大量に残っています。
つまり、「SESは休めない」という話には、“昔は実際そうだった部分もある”のです。
ただし重要なのは、それが現在も標準とは限らないという点です。
ネットでは「普通の話」は拡散されにくい
もう一つ大きいのが、ネットの性質です。
人は「普通だった話」より、「嫌だった話」の方を書き込みやすい傾向があります。
例えば、
- 普通に有給取れました
- 旅行行けました
- 平和でした
という話は、わざわざ投稿されにくいです。
一方で、
- 有給を断られた
- 休日対応が地獄だった
- 案件が炎上した
- 現場がブラックだった
という強い感情を伴う話は、注目を集めやすくなります。
特に匿名掲示板やSNSでは、“怒り”や“愚痴”の感情が乗った投稿ほど拡散されやすいです。
そのため、「SES=全部ブラック」という印象だけが強化されやすくなります。
もちろん、本当に問題のある会社は存在します。
ただ、それをSES全体の標準として捉えてしまうと、実態とはズレる部分があります。
現在のSES業界は昔とかなり変わっている


ここ数年で、SES業界を取り巻く環境はかなり変化しました。
昔のイメージだけで見ると、現在の実態を見誤ることがあります。
エンジニア不足で「雑に扱う」が通用しなくなった
現在のIT業界は、慢性的なエンジニア不足です。
SES企業にとっても、エンジニアは重要な資産です。
昔のように、
- 嫌なら辞めれば?
- 代わりはいくらでもいる
- 現場優先で当然
という感覚で接していると、人がすぐ辞めてしまいます。
今は口コミサイト、SNS、転職エージェントなどを通じて会社の評判が広がる時代です。
そのため、
- 有給が取れない
- 営業が放置する
- 稼働が高すぎる
- 現場変更ばかり
- フォローがない
といった会社は、採用面でかなり不利になります。
結果として、まともなSES企業ほど、
- 有給取得推奨
- 残業削減
- 稼働管理
- リモート導入
- 定期面談
- 営業フォロー
などに力を入れるようになっています。
つまり現在は、「休ませない方が得」というより、「働きやすくしないと人が集まらない」という時代なのです。
コンプライアンス意識もかなり強くなった
現在は、労務管理に対する社会全体の目もかなり厳しくなっています。
有給休暇は労働者の権利です。
もちろん、業務都合で調整相談が入ることはあります。
しかし、「SESだから有給禁止」「客先が嫌がるからダメ」という対応は、まともな会社では通用しにくくなっています。
特に大手企業案件では、
- 勤怠管理
- 残業管理
- ハラスメント対策
- 労務監査
などがかなり厳格化されています。
そのため、昔のように「現場の空気だけ」で無理を押し通す文化は減っています。
リモートワーク普及で柔軟性も上がった
コロナ禍以降、IT業界ではリモートワークが一気に普及しました。
これにより、働き方の柔軟性もかなり上がっています。
例えば、
- 半休を取りやすい
- 通院しやすい
- 家庭都合に対応しやすい
- 移動負担が減る
など、以前より“休みへのハードル”が下がった面があります。
また、「完全に1日休む」以外にも、
- 午前だけ休む
- 病院だけ抜ける
- 子どもの行事だけ参加する
といった柔軟な調整もしやすくなっています。
昔のSESは、「現場にいない=サボり」くらいの感覚の現場もありました。
しかし現在は、リモート前提の案件も増え、「成果ベース」で評価する考え方もかなり広がっています。
それでもSESで有給が取りづらくなるケース


現在のSESは昔よりかなり改善されています。
ただし、「どんなタイミングでも完全自由に休める」というわけではありません。
リリース直前はどうしても調整が入りやすい
IT業界では、本番リリース前に作業が集中しやすいです。
例えば、
- テスト
- バグ修正
- 手順確認
- リハーサル
- 本番反映準備
などが重なります。
このタイミングで担当者が抜けると、プロジェクト全体に影響が出ることがあります。
そのため、



リリース後にずらせませんか?
と相談されることがあります。
ただ、これはSESだけではありません。
受託開発でも、自社サービスでも、リリース前は普通に忙しくなります。
つまり、「SESだから休めない」というより、“システム開発の仕事”として発生しやすい状況なのです。
障害対応中は休みづらいこともある
システム障害が発生すると、原因調査や復旧対応が最優先になります。
例えば、
- サービス停止
- 決済エラー
- サーバーダウン
- データ不整合
などが起きれば、現場は緊急対応モードになります。
このタイミングで休みを申請すると、



できれば落ち着いてからにしてほしい
と言われることがあります。
これもSES特有ではありません。
むしろ自社サービス企業の方が、売上や顧客影響が直接出るため、プレッシャーが強いケースもあります。
少人数案件は一人抜ける影響が大きい
例えば2〜3人規模の案件では、一人が抜けるだけで対応力が大きく下がります。
そのため、
- この日は避けてもらえると助かる
- 来週にできない?
- 午前だけ対応お願いできる?
と相談されることがあります。
これはSESに限らず、どんな仕事でも起こることです。
飲食店でも、少人数営業の日に全員同時には休めません。
小売でも、年末商戦中はシフト調整があります。
つまり、「有給が取れない」のではなく、「チームで仕事を回す以上、一定の調整はある」という話なのです。
受託開発や自社サービスでも休みにくいことはある


「SESだけが特別ブラック」という見方は、かなり単純化されています。
実際には、他の開発形態でも休みにくい状況は普通に起こります。
受託開発は納期プレッシャーが強い
受託開発は、クライアントから依頼を受けてシステムを作る仕事です。
そのため、契約上の納期があります。特に、
- 仕様変更
- バグ多発
- 設計ミス
- テスト遅延
などが起きると、終盤で一気に負荷が高まります。
こうした状況では、有給どころではなくなるケースもあります。
むしろ、「納期絶対」の空気が強い分、受託開発の方がしんどい案件もあります。
自社サービスは障害時のプレッシャーが大きい
自社サービス企業は自由そうに見えます。
しかし、EC、金融、予約、決済、求人などのサービスでは、障害が売上に直結します。
そのため、
- 深夜障害対応
- 緊急リリース
- 休日対応
などが発生するケースがあります。
特に少人数企業では、「この人しか分からない」が発生しやすく、逆に休みにくいこともあります。
つまり、「自社開発=絶対ホワイト」ではないのです。
SESで有給を取りやすくするために意識したいこと


SESでは、会社や案件の体制も大切ですが、本人の動き方によって有給の取りやすさが変わることもあります。
もちろん、有給は労働者の権利なので、過度に遠慮する必要はありません。
ただ、現場で気持ちよく休むためには、日頃から「休んでも仕事が止まらない状態」を作っておくことが重要です。
早めに予定を共有する
有給を取りたい日が事前に分かっている場合は、なるべく早めに共有するのが基本です。
たとえば、旅行、通院、家庭の予定、役所手続きなど、前もって日程が決まっているものは、直前ではなく早めに伝えておくと調整しやすくなります。
特にSESでは、現場のPMやリーダーだけでなく、自社の営業担当や上司にも共有が必要になる場合があります。
直前に



明日休みます
と言うよりも、2週間前、1か月前に



この日は有給を取りたいです
と伝えておいた方が、現場側も作業調整をしやすくなります。
これは遠慮するためではなく、自分が休みやすくするための段取りです。
早めに伝えておけば、
- 打ち合わせを別日にずらす
- 作業を前倒しする
- 他メンバーに共有する
- リリース日と重ならないよう調整する
といった対応ができます。
逆に、毎回直前申請ばかりだと、どれだけ有給の取りやすい現場でも調整が難しくなります。
自分の作業を見える化しておく
有給を取りやすい人は、普段から自分の作業状況を周囲に共有できています。
たとえば、
- 今どの作業をしているのか
- どこまで終わっているのか
- 何が未対応なのか
- どこに資料があるのか
- 休み中に確認が必要なことはあるのか
が分かる状態になっていると、周囲も安心して休ませやすくなります。
反対に、作業内容が本人の頭の中にしかない状態だと、「この人が休むと誰も分からない」という状況になります。
そうなると、有給そのものは取れても、休む前後でバタバタしたり、休暇中に連絡が来たりする可能性が高くなります。
これはSESに限らず、どの職場でも同じです。
チケット管理、作業メモ、簡単な引き継ぎメモなどを残しておくだけでも、休みやすさはかなり変わります。
有給を気持ちよく取るためには、「自分が休んでも現場が困らない状態」を作っておくことが大切です。
困ったときは自社の営業や上司に相談する
SESでありがちなのが、現場に気を使いすぎて、自分だけで抱え込んでしまうケースです。
たとえば、
- 有給を言い出しにくい
- 休みたいと言ったら嫌な顔をされた
- 毎回理由を細かく聞かれる
- 忙しすぎて申請できる空気ではない
こうした状況が続くなら、自社の営業担当や上司に相談すべきです。
SESエンジニアは客先で働いていても、雇用元は自社です。
そのため、労務管理や働き方の相談先は、自社側にあります。
良いSES企業であれば、営業担当が現場に状況を確認したり、必要に応じて調整してくれたりします。
逆に、「現場のことは自分で何とかして」と丸投げする会社は注意が必要です。
有給を取りやすいかどうかは、現場だけでなく、自社がどこまでエンジニアを守ってくれるかにも左右されます。
「休む=迷惑」ではなく「休める状態を作る」と考える
真面目な人ほど、「



自分が休むと迷惑ではないか
と考えすぎてしまいます。
もちろん、無責任に仕事を放り出して休むのはよくありません。
しかし、きちんと事前共有し、必要な引き継ぎをしていれば、有給を取ること自体に後ろめたさを感じる必要はありません。
むしろ、休みを取らずに疲れを溜め続ける方が、長期的にはパフォーマンスが落ちます。
エンジニアの仕事は、集中力や判断力が重要です。
疲れた状態でコードを書いたり、障害対応をしたりすると、ミスが増える可能性もあります。
だからこそ、有給は単なる「休み」ではなく、安定して働くためのメンテナンスでもあります。
SESであっても、受託であっても、自社開発であっても、長く働くためには適度に休むことが必要です。
本当に見るべきなのは「SESか」ではなく「会社と案件」


有給の取りやすさを決めるのは、SESという言葉そのものではありません。
重要なのは、以下です。
良いSES企業は営業がちゃんと守る
まともなSES企業では、営業担当が現場との間に入ります。
例えば、
- 稼働が高い
- 休みづらい
- 現場と相性が悪い
- トラブルが起きた
といった場合、営業が調整します。
逆に悪い会社だと、



現場でなんとかしてください



客先に言ってください
と丸投げされます。
SESは営業品質でかなり働きやすさが変わります。
案件内容で働き方はかなり変わる
SESは案件依存の要素が強いです。
例えば、
- 官公庁系
- 長期保守
- 社内システム系
などは比較的落ち着いていることがあります。一方で、
- 炎上案件
- 短納期開発
- 人手不足案件
などは忙しくなりやすいです。
つまり、「SES全体」で語るより、「どの案件に入るか」の方が実態としては重要なのです。
まとめ
- 「SESは有給が取れない」というイメージには、昔のIT業界の働き方や客先常駐への誤解が影響している
- 現在のSES業界は、エンジニア不足や労務改善の影響で、昔よりかなり有給を取得しやすくなっている
- 実際の働きやすさは「SESかどうか」より、会社の体制・営業フォロー・案件内容・現場文化の影響が大きい
もちろん、案件によって忙しい時期や調整が必要な場面はあります。
ただ、それは受託開発や自社サービスでも普通に起こることです。
だからこそ、「SESだから絶対ブラック」と決めつけるのではなく、会社や案件の実態を見ることが重要だと言えるでしょう。









